MAKI KAWASHIMA BLOG

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TOKYOラブストーリー

男友達④

September 16, 2007 1:25 PM

「俺もシャワー浴びてくるから、先に寝てていいよ。」

「うん。」

リビングと続きになっているベッドルームに移動し、バスローブのままベッドの中にすべりこんだ。

ひんやりとしたシーツが気持ちいい。

このまま寝てしまうのも、いいかもしれない、と思った。

リビングから聞こえるアニマルチャンネルの解説と音楽が、脳に心地よく響く。

もしかしたら、今夜、間違って「妹」の枠を超えてしまうかもしれない。

そうなったらそうなったで、いいのかもしれない。

でも・・・。

「彼」の顔がふっと脳裏をよぎって消えた。

やっぱりこの場所に居続けるわけにはいかない・・・。

私はシーツの隙間から両足を伸ばし、ベッドの脇からするりと抜け出てリビングへ向った。

そして、リビングの椅子にシワにならないようにかけておいたワンピースに着替えはじめる。

着替えながら、自分でも自分の忠誠心がおかしくなって笑ってしまった。

相手は、私と距離を置こうとしているのに?

それなのに、思い出すのは「彼」の顔。

カフェで待ち合わせして、遅れた私があわてて入り口でつまづきそうになったのを見て、
嬉しそうに笑った彼。

初恋の人と私が似ているんだよ、と言って優しい目をした彼。

もう、もしかしたら、私とは分かち合うことはないのかもしれないけれど、
だけど、やっぱり裏切りたくなかった。

「彼」のことを愛しはじめた自分自信を裏切りたくなかった。


シャワーを浴びたジーン君は、別の部屋で仕事をしているようだった。

ドアの隙間から、部屋の明かりがこぼれる。

とんとん。

私は部屋のドアをノックする。

すると、青いストライプのバスローブに着替えたジーン君がでてきた。

「あれ、どうしたの?」

ほっといて悪かったかな? という表情をして言った。

私はそんなジーン君を察して、微笑んで首に手を回してハグをした。

「ありがとう。 癒されたから、帰るね。」

「どうしたんだよ。」

「ううん。 本当に癒されたから。 ありがとう。」

私が本心からそう思っていることを確信すると、安心したように 

「そっか。 こっちこそ、ありがとう。」

と言って、ジーン君は慣れた手つきで私の頭をぽんぽん、とたたいた。


玄関のところで、エレベーターが上に上がってくるのを待っていた。

私は最後に伝えたいことがあって、ジーン君が着ているバスローブの端を引っ張った。

伝えておきたい、のではなく、自分の気持ちを聞いてもらうことで確認したかったのかもしれない。

「あのね・・・。」

「ン? どうした?」

「あのね、どうしても聞いてほしいの。」

「どうしたんだよ。」

「やっぱり、私、彼のことが好きみたい。」

、ジーン君の胸元を見つめながら言った。

「でも、自分の状況を告白したらひいちゃって、もうだめかも。」

バスローブのブルーがゆっくりと近づいてくる。

ジーン君は、私を自分の方へ抱き寄せ、おでこにキスして言った。

「全部話しても受け入れてくれるやつは絶対にいるし、それに、まだわからないじゃん。」

心臓の鼓動が、胸に顔をうずめた片方の耳から伝わる。

ジーン君は、私をすっぽりと両腕で保護するようにくるみ、私の背中をきゅっときつく抱きしめた。


エレベーターが到着し、扉が開く。

私はジーン君の顔を見上げて言った。

「ジーン君て、やさしいね。」

ジーン君が笑った。

「みんなに。」

私がおどけたようにそう言うと、日焼けした口元から白い歯がのぞいた。

エレベータに乗り込み、ジーン君に手を振った。

ジーン君も手を振った。

扉が閉まりだし、ジーン君の笑顔が半分になり、
やがてエレベーターはゆっくりと下階へと降りていった。


外にでて、外気に触れる。

ようやく秋らしくなってきた9月の夜風が、頬から首元をつたい、
まだ半袖の素肌に触れ気持ちがいい。

いつの間にか、時計の針は、もう夜中の1時をまわっていた。


「自分に忠実に生きる。」

自分の感情は自分のものなのに、
こんなにシンプルで単純なことが、実はとても難しかったりする。

「自分に忠実に生きる。」

私はもう一度、ちいさくつぶやいた。

今も、これからもずっと。

第1章 完
                      ※このお話は、フィクションです。


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男友達③

September 12, 2007 1:30 PM

[TANGO LESSON ~男友達③~]

ジーン君と、ついに二人っきりになってしまった。

薄暗い部屋の中で、TVのゴルフの解説の声が妙に響いて聞こえた。

「よかったら、靴、スリッパに変えれば。 楽になるよ。」

洋式スタイルのこの部屋で、ジーン君と二人っきりになるのは、何も今日が初めてではない。

何ヶ月か前に、用事があって電話をしたら、たまたまジーン君が風邪で倒れていて、
「何か作りにきてよ。」 
と、言われて、あまりにも苦しそうだったので、おかゆを作りにきたことがある。

「昨日も、作りに行こうかって言ってくれた子もいたんだけどさ。
その時は、あまりにも体調がひどすぎて、そういう気分じゃなかったんだよ。」

ステディを持たない主義のジーン君が、言った。

人を呼び出しておいて失礼な人だな、とも思ったけど、なんとなく憎めない雰囲気がジーン君にはある。


「今日、遅くに起きたから俺は全然眠れないと思うから、
良かったら、泊まっていってもいいよ。」

男友達と二人っきりで、しかも泊まろうというのはどうかと思う。

でも、、私の位置づけは、ジーン君にとっては「妹」のようなものだ。

別に、ジーン君に男を感じないわけではない。

ジーン君は独特な存在感があって女の子にモテる。

だけど、出入りが自由なこのうちには、しょっちゅう、かわるがわる色んな子が出入りしているのも知っている。

「君より年上から、下は大学生までいるよ。」

前に、そんなふうに話されたこともある。

「じゃ、シャワー借りるね。」

何となく、今日は一人でいたくない。

そんな想いが、私を薄暗い廊下の向こうにあるバスルームに向かわせた。

シャワーを浴びて戻ってくると、ジーン君はソファーでTVを見ていた。

「夜はさ、アニマルチャンネルがボーっとできていいんだよ。」

そう言うジーン君のとなりに、私は膝を抱えて座る。

白いバスローブから、足がちょこっとのそく。

TVを見ながら、ジーン君が私の肩に手を回し、私の頭を自分の胸へともたげさせた。

人のぬくもりを感じると、心もあたたかい気持ちになるから不思議だ。

「触れる」ということは、とても大切な行為だと思う。

どんなに高い贈り物も、どんな言葉も、気持ちのこもった、たった1回のハグにはかなわない。

生まれたきた赤ちゃんが、もしもずっと無菌室にいて、
誰にも触れられない生活をしてきたとしたら、果たしてどのくらい生きられるのだろうか。

何の罪もなくエイズに侵された子供達は、もっと、抱きしめられるべきではないか。

色んな想いが私の中で交差する。

「よしよし、して。」

「いいよ。」

TVの画面のシャチが、水中で腹を海底にこすり付けるようにしてマッサージをする姿を見ている
間中、ジーン君は私の頭をなでてくれた。

                             to be continue・・・
  
                             ※このお話はフィクションです。


男友達②

September 11, 2007 11:48 PM

ジーン君から、くるときについでに買ってきてほしい、と頼まれた食材を買うために、
六本木ヒルズのフードショーに立ち寄った。

フードショーの隣の「TSUTAYA」の前でタクシーを止め、降りる。

スタバのテラスでお茶する人たち。

視線を上に向けると2階のガラス越しに、CDを視聴する人たちの姿が見えた。

いるわけもないのに、「彼」の姿を探してしまう。

「ここにいると、あっという間に時間がたっちゃうんだよ。」

何週間か前に、二人で立ち寄った時の記憶が脳裏に蘇り、胸が痛くなった。


気を取り直して、フードショーで買い物をして、ジーン君に言われた場所に向う。

ジーン君に言われた場所に到着すると、建物の1階のフロアーで暗証番号を入れる。

すると、一見壁に見える白亜の扉がガーっと開く。

私は扉の奥にあるエレベーターに乗り、上にあがる。

エレベーターが止まり、扉が開いた。

降りて2.3歩進むと、薄明かりの部屋の中から葉巻の香りがした。

「で? 何を聞きたいの。 男の心理ならここにいるおじさん二人がなんでも答えるよ。」

と、全然おじさんには見えない浅黒いゴルファーみたいな顔をしたジーン君が言った。

「そもそも。」

私が切り出す。

「結婚してたり子供がいたり、って言うのはどうなんでしょう。」

「それはさ、君が相手に全部を求めすぎなんじゃないのかな。」

食後のカプチーノを飲みながら、ジーンくんのボスが口を開いた。

「うーん、そうじゃないんです。
相手がそのような状況なのは、しかたがないと思うんです。
それでも、付き合うかどうかは自分の判断ですから。
ようは、、、。 私がそのような状況だと相手がどう思うのかなって。」

「俺は全然関係ないね。 かえってその方が責任がなくていいという場合もあるし。
いいと思えば関係ないよ。」

ステディを決して持とうとしないジーン君が言った。

「・・・。 たぶん、相手は、私がフリーだと思ってたんだと思うんです。

別に、隠していたわけではないんですけど・・・。
聞かれなかったから・・・。
それで、今の相手と別れようと思っているって言ったら責任感じちゃったみたいで。
でも、決して、彼が直接の原因といわけではないんです。」

「生活感ないからね。 君は。」

葉巻に火をつけながら、ジーン君が言った。

「で、結婚したいの? 君は。」

ボスが、単刀直入に聞いてきた。

「・・・。 今は・・・。 恋がしたいんです。」

恋愛も仕事も行き詰まって、逃げるように結婚に踏み切ってしまった20代。

それから7年。
「妻」であり「母」である時間は、瞬く間に過ぎていったけど、
私の中で肝心な何かが欠落していた。

7年前のあの夏に、私は私の一部を置き去りにしてきたままだった。

相手が悪いわけではない。

「結婚」という道を選んだことも後悔はしていない。

だけど。

「彼」と出会ってしまったことで、気づいてしまった。

私はもう、その一部を取り戻さないと、これ以上は前には進めない。

例えそれが、大きなリスクを伴うものであったとしても・・・。


「結婚」というのは、どうもいつも「義務」という二文字が付きまとう。

社会的に見て羨望に値する相手かどうか、実際的に役立つ相手かどうか、

そういった観点で選びがちだったりする。

結婚を意識せずに出会っていたら、もしかしたら、
それぞれ別のパートナーを選んでいたかもしれない二人が、一緒に居続けるというのも
なんだか腑に落ちないものがあるが、「結婚」とは、そういうものなのかもしれない。

「うちもさ、妻が35ぐらいの時から妻とはしてないよ。 
でもさ、悪いやつじゃないし、やさしいんだよ。
だから、外で何かあっても、今更別れるっていうのも可愛そうだろ。」

ボスが言った。

それは、そう思う。 妻の立場からしてみたら、なおさらだ。

20年とか、25年という長い年月の積み重ねの深さは、

ぽっとでてきたような若い女がとって変われるようなものではない。

でも・・・。

「この人と一緒にいて、触れていて安心するっていう特別な空気感が
何故なのかっていうのは、言葉では言い表せないよね。」

彼の言葉がよぎる。

20代半ばで結婚してから、私はそんな安心感を知らない。

触れられない、そんな緊張感をほどくかのように、TANGOに出会ったその足で
彼を見つけた。

「君と旦那さんって、結構歳が離れているんだね。」

夫の歳を聞いて、ボスがそう言った。

「いや、若く見えるけど結構年齢いってるんですよ。」

ジーン君が、私のことを、そうボスに言った。

もしも、私が実年齢よりも若く見えるとしたら、

それはある意味20代半ばで時間が止まってしまってしまっていたからかもしれない。

「だからね、例えば若い子と2年ぐらい付き合っちゃうと長いなって思うんだよ。」

ボスが言った。

「責任、ですね。」

ボスは少し笑って、遠くを見ながら葉巻を吸った。

男性も男性なりに、責任と愛の狭間でなんとか折り合いをつけようとしているのだ。

「男」とは、そういうものなのかもしれない。

きっと、「彼」もそして「夫」も。

「じゃ、俺、そろそろ帰るわ。」

葉巻の火を消して、ボスが椅子から立ち上がった。

「じゃあ、私も・・・。 もうちょっとしたら帰ります。」

なんとなく、もう少しここにいて、ジーン君と話がしたかった。

なんとなく、人のぬくもりが欲しかったのかもしれない。

私とジーン君は、薄暗いエレベーターホールまでボスを見送りに行った。

「じゃ。」

と言って、ボスは片手を無造作に上げてエレベーターの中へと消えていった。

                          to be continue・・・

                         ※このお話はフィクションです。

男友達①

September 10, 2007 12:53 PM

[TANGO LESSON ~男友達①~]

土曜日のミロンガ。
LESSONからそのまま残る人たちも多く、今日は人で溢れかえっていた。

いつもは、ペリエかシャンパンをオーダーするところだけど、
LESSONのあとの心地よい気だるさのせいか、めずらしくカウンターで赤ワインを頼む。

奥にある赤茶の革張りのソファーに戻り、深く腰をおろし、
サロンの橙の薄明かりの中で揺れるワインの「赤」と、グラスの向こうに見える
絡みあう足さばきを遠巻きに見ていた。

異国の雰囲気と音楽とダンス。

私を違う世界へ連れ出してくれる「何か」を、私は渇望し、捜し求めていたのかもしれない。

ここでは、あまり言葉は要らない。

顔見知りがいて、挨拶をかわして、気が向いたら音楽に身を任せて踊って・・・。

「彼」の世界と、求めるものを今更ながら、ほんの少しだけど理解しはじめたような気がする。


ダンスの相手からアプローチされて、踊って、また踊って。

しばらく踊り続けたので、少し休憩。

何気なく、鞄の中の携帯をチェックすると、
久しぶりの名前が着信で残っていた。

ジーン君だった。

音で溢れているサロンの中だと話しずらいとも思ったけれど、とりあえずジーン君に電話をしてみた。

ちょっとした用件があって連絡してきたようだが、とりあえず、今はボスといるという。

「ちょっと来てみれば。」

ジーン君が言った。

突然だったから、少しためらいもあったけどジーン君に今の状況を相談したいようにも思った。

「うん。 じゃあ、ちょっと男心についても聞いてみたいことがあるから。」

そう言って電話を切ると、ダンスシューズを履き替え、私は足早にサロンをあとにした。

                             ※このお話はフィクションです。


嵐の中で踊る

September 6, 2007 10:53 PM

[TANGO LESSON~嵐の中で踊る~]
                          
台風の中、今日もアルゼンチン・タンゴのレッスン。
もしや、私だけでは?
と思いながら行ったけど、結構人がきていて驚いた。

今日は、本当に基礎の基礎の見直し。
組むときの、二人のコンタクト。
胸から伝え受けるもの・・・。

「胸の向きを感じて踊る」と、アルゼンチン人のダンサーが言った。

こんなときにも、「彼」を思い出してしまう。

いや、こんなときだからこそ、なのかもしれない。


満月の夜の告白は、果たして正しかったのだろうか。

自分のことを伝えるのに必死で、相手のことなんて何も考えていなかったのではないか。

私の中で、ほんの少し後悔がよぎった。

10代や20代ならともかく、この歳で健全な大人なら、
お互いに色々あって当たり前。

だけど。

皮肉なことに、あまりにも想いが純粋すぎて
事態は思いがけない方向へと進んでしまった。

何しろ7年振りに、居心地のよさを感じてしまった恋だったから
愛に忠実に、生きたかった。

愛に忠実に。

でも、結局、それが相手を息苦しくさせてしまったようにも思う。

もっと上手に、器用に生きれたらどんなに楽だろう、と思う。


本当は、恋がしたかっただけなのに。

楽しい時間を共有したかっただけなのに。


一度は受け入れようとしてくれた「彼」からは、連絡のないまま。

距離ができてしまった。


そんな、どうすることもできない想いが、かえって私をダンスにむかわせる。

踊ろう。

とにかく、踊ろう。

ダンスは、悲しいこと、辛いこと、すべての感情を昇華させてくれる。

それがタンゴであるなら、なおさら。

嵐の中で、踊り続ける。


明日になったら、嵐は通り過ぎるのかな。

                   ※このお話はフィクションです

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